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250キロを出すには、排気量が不足していた。
エンジンをひと回り大きくする必要があった。 当時、国内で走行するクルマの最高速度はせいぜい時速180キロメートル。
T社が持っていた東富士研究所のテストコースは周回路3.4キロで、直線はたった一キロしかなかった。 ちょっとスピードをあげるとカーブにさしかかるから、せいぜい時速2百キロを試すのがやっとだった。
時速250キロを実験するコースにもこと欠いていた。 ベンツの560SELでは時速250キロ近く出た。
BMWの7シリーズでも時速222キロのスピードが出た。 「時速250キロを実現するため、3.8リットルエンジンを開発しようというコンセンサスづくりが進んだ。

しかしベンツにしるBMWにしろ、スピードは出ても空気抵抗などにあって騒音がやかましく、スピードを出すほどガソリンを食うという燃費効率の悪さがあった。 時速100キロの場合、空気抵抗は50%に留まるが、時速250キロになると、空気抵抗は77%という大きい数字に上昇する。
一方、エンジン出力250馬力の場合、Cd値が通常のセダン並みの0.35台だと最高時速は238キロ止まりだが、Cd値が0.29なら最高速度250キロは可能となる。 エンジンを大型化すると同時に空気抵抗値の低いクルマを開発することが、新車開発には不可欠なテーマとなった。
86年7月、第3回目の外形デザインのプレゼンテーションが行われた。 デザインは箱型だったが、リァウインドウからトランクにかけてなだらかな線を表現し、トランクサイドからトランクにまたがる部分をやわらかなカーブでまとめて空気の剥離を防ぐようにした。
Cd値は、車体下の空気の流れをよくしてやるためにパネルを貼るなどの工夫をすると、念願の0.3を切って、0.29をマークした。 初めて空力と箱型セダンを両立させたデザインのクルマが誕生したのである。
内田も炭谷も、フォーカスト・グループによる懇談会を開いたその夜はゆっくり眠れそうだった。 これを契機に、空力的にもデザイン的にも、一気加勢に細部を詰める作業が進んだ。
これに対し米国T社では、社内にCS委員会を設けて顧客の信頼性のばん回をはかろうとしていた。 折から1985年は、日本の自動車業界が対米自動車輸出を230万台に留めるという自主規制を実施した年だった。
T社グループ全体にとって、世界的に自動車の安全規制や排気ガス規制が強化されつつあるなかで、海外市場の開拓と国際競争力の強化は全社的な命題だった。

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